健康に関わる 西洋占星術 1



 健康に関わる質問が持ち込まれることが多々あります。ヒポクラテスが4つのエレメントを使った医療体系を打ち立てたときに、体系だった理論が無かった医療・健康の分野に一大革命が起きたことは想像に難くありません。 

 

この理論は病名を追及する現代の医学とは違い、「体のアンバランスを是正してバランスを取り戻すと、肉体的な健康は回復するのだ」という理論です。が、今更、ヒポクラテスやガレノスの理論を振り回したところで、誰も見向きもしないでしょう。

 

というのは、ルネサンスの傾向の1つとして、哲学を捨てて科学として存在していればこと足りるとした考え方にあります。新しいものが信頼性を得るためには、昔の科学はナンセンスであり、それを行っていた誰彼はいかさま師、あるいは、ひじょうに愚かな人物のどちらかであると結論づけることです。占星術師として個人でクレジット・カードのサービスを受けようとすると断られます。何故か。占い師は、いかさま師か、ひじょうに愚かな人物であると見做されているからかもしれません。

 

病名を克明に振り分けて、それに合った治療を行うというのも1つの方法だと思います。悪いわけがありません。(現代の医学)

 

病名を付けずに、肉体の持つ自然治癒力を最大限に発揮させるのも1つの方法だと思います。悪いわけがありません。(ヒポクラテスの医学)

 

最初の方法は、今日、医療機関と称する様々な現場で行われていて、後者は、代替医療と称される、本当に効くのかと思われるような方法も全て一緒くたにされて、くくられています。

 

ヒポクラテスは、今日で言う代替医療の創始者であるはずなのですが、どういうわけか医学の祖として医学の本にも引用される始末。矛盾しています。個人々人は哲学を持つ凛とした医療従事者の方もいらっしゃいますが、医学界全体の考え方とすれば、哲学が無いに等しいものです。

 


 健康状態をチャートから観察する場合には、占星術的な視点と、ヒポクラテスの唱えたバランスという視点から捉えることになります。ここでは、お医者さんが実際に患者の家々を見回って、地域住民の健康状態を観察していた時代のデキュムビチャー・チャート(横臥チャートと呼ばれる、病の床に臥せった時間を使うもの)はほぼ使えませんので、ホラリー占星術で、誰かに尋ねられた質問に応える方式を採用することにします。

 

ご存知のように、西洋占星術は明らかにエレメントが主要な要素として構築されています。ヒポクラテスの医学も、エレメントに基いていますから、ガレノスは占星術で解けると考えたのでしょう。

 

同毒療法(ホメオパスとか、ホメオパシーと呼ばれるもの)とも少し違っています。同毒療法の場合、多くは共鳴関係でバランスが整うものとします。しかし、占星術で行う場合には、反共鳴関係も使うことになります。かなり論理的に仕上がっているのです。健康状態を保つためにも、ぜひ、取り組んでみてください。

 

ウィリアム・リリーの6ハウスの項目がやたら難しい理由は、デキュムビチャートとホラリーチャートを同じ土俵で論じているからです。どれが横臥チャートで、どこからがホラリーなのかがよく分かりません。リリーの頭の中では整理されていたものと思いますが、リセプションの定義を曖昧にしてしまったように、頭が良すぎたせいで、これは人々が理解できているものとして語られていることが多々あります。リリーの6ハウスの項目を理解するには、何年も掛かります。

 


 健康面の事柄を西洋占星術的な観点で考察していくと、肉体的な要素としてエレメントを扱っていながら、心理学的な構成要素としてのエレメントを扱うこともあり、また、ハーブ、パワーストーン、自然食品などのような天然物の中にもエレメントを見つけるので、それらの相関関係も見分けられるようになります。

 

ホラリー占星術で健康を観察する場合に、一般のホラリーと少しだけ違った面が出てきます。それは、よりエレメントにウェイトを掛けているということから違いが出てきます。例えば、健康状態がすぐれないと訴えたクライアントのアセンダントのロードが水星だったとして、水星を双子のサインで見つけたとします。水星のエレメントはコールド&ドライです。双子のサインはホット&モイストですから、全く正反対のサインに置かれることになります。ということは、この水星は、ディグニティーが高いはずの双子のサインで、健康状態を害されていると観察します。

 

間違えないで頂きたいのは、健康状態に何ら違和感を覚えていない人が、私の健康状態はどうなのかと尋ねて、水星が双子のサインに入っていても、健康状態がすぐれないとしていない点です。

 

 あくまでも、不健康状態を感じている場合の判断方法なのです。

 

では、単に健康と不健康と、どちらの側に体の状態が傾いているのかと問われたならば、どうするのかですが。

 

その時だけは、アセンダントのロードと、6ハウスを使います。アセンダントのロードのエッセンシャル・ディグニティーが高ければ、健康状態が良いことになり、6ハウスのロードのエッセンシャル・ディグニティーが高ければ、健康状態がすぐれないと判断します。

 

ですから、水星がアセンダントのロードだとして、双子のサインに入っているのは、健康状態が良いことになります。6ハウスのロードである火星のディグニティーがその時低ければ、確実に健康な状態だと言えます。

 

じゃあ、6ハウスはどう扱うのか… になっていきます。

 


◆ 6ハウスの扱い方


 6ハウスは確かに病気のハウスと呼ばれていますが、不健康状態に付いて問われた場合には、直ぐさま6ハウスに急ぎません。チャート全体を観察して判断をします。要は、体全体(健康状態)を見ているのであって、病気を見ているわけではないからです。

 

では、病気のハウスと呼ばれる6ハウスはどのように扱われてきたのでしょうか。6ハウスは水星のハウス[カルディアン・オーダーで6番目の惑星]です。6ハウスは、火星がジョイとなるハウスです。6ハウスは、水星の持つメッセンジャーという意味であったり、火星の持つ、不要なものを切り取るといった意味であったり、両親の兄弟(4ハウスからの3番目のハウス)として叔父叔母を表したりもします。ペットという意味や、従業員といった意味もあります。又、他からの厄介事といった意味も持ちますから、他人からインフルエンザをうつされたとか、コロナウェイルスをもらってしまった、というように病気のハウスとしても使われます。火星は選別をする惑星ですから、不要なものを捨てるとか、入用なものを選択するという意味も持ちます。火星がジョイですから、切り取る、手術という意味も持ちます。どの意味で読み取ればよいのか、質問次第です。

 

 例えば、質問が

「来週の日曜日に彼女とデートをしたいのだけれども、旨く行くか?」

であったとして、2ハウスのロードが6ハウスに入っているのを見つけます。これは、あなたの財布が病気である(中身がそれほどない)といった状態を見つけることになります。答えは「高級レストランなどを選ばずに、近くの公園を散歩するとか、行き先を考えなさい」となります。

 

「新しく事業を始めたいけれども、その事業は旨くいきますか?」

こういった質問で、11ハウスのロードを6ハウスに見つけたならば、仕事からの利益(11ハウス)が病気になるとなりますから、「計画を練り直すように」が答えとなります。

 

ホラリーの質問で、月が6ハウスに入っていることがよくあります。月は気持ちを表す惑星ですから、行おうとしている何かにそぐわない気持ちを伴わせていることになります。それは一種の雑念です。

 

恋愛の質問でアセンダントのロードが、6ハウスに入っているのを見つけることもあります。カレントは心のどこかで相手を、私に相応しくないのかもしれないと感じています。始めっから「一晩だけでも」と考えていたり、「もう一度だけ」と真剣に望んでいることもあります。

 

再度述べますが、健康状態に関わる質問や、病気の質問を受けたならば、チャート全体を観察することになり、6ハウスや、6ハウスのロードを直接観察することはありません。健康状態というのは、体全体(チャート全体)のバランスを観察してこそ得られるものだからです。

 


 健康を扱う占星術を行う場合、エレメントを言い換えるととてもエレガントな、まさに高度な西洋占星術を行っている風になります。それほど高度でもないのですが、雰囲気が良くなるわけです。= で結んでいる通り、同じものを、違う呼び方をしています。

 

火のエレメントを胆汁質と言います。

 火のエレメント = ホット&ドライ = 胆汁質

 

地のエレメントを黒胆汁質と言います。

 地のエレメント = コールド&ドライ = 黒胆汁質

 

風のエレメントは多血質。

 風のエレメント = ホット&モイスト = 多血質

 

水のエレメントは粘液質

 水のエレメント = コールド&モイスト = 粘液質

 

どの単語を使おうとも構いません。それらは、気質と呼ばれたり体液と呼ばれたりします。何ということもない、エレメントによって語られるという単純な話です。

 

 

ところで、エレメント(元素)は、元と呼ばれるものから組み合わせて作り出されています。それらは、ホット、コールド、ドライ、モイストです。

 

ギリシャの哲学では、熱(ホット)が無いと物事は始まらないのだとされました。つまり、「動く・動き」の裏には熱があると考えたのです。

 

熱が使い果たされた状態が、冷(コールド)です。「止・静」にあたります。

 

熱によって、モノは乾くと考えたので、二義的にホットからドライが生み出されることになります。乾いたものはくっ付きません。それが、ドライ「乾・分ける」

 

冷たさから生み出されるのは、露をうつ状態、湿(モイスト)です。湿ったものはくっ付きます。それが、モイスト「湿・付ける」です。

 

これら4つの元を2つ組み合わせて、ギリシャの哲学で述べるところの元素(エレメント)が出来ています。5つ目のエレメントである「エーテル」は、偏在しているか、天にあるものとして扱われます。

 

2つ組み合わされますが、ホットでコールドなものは考えられず、モイストでドライなものは考えられなかったので除かれました。

 

アリストテレスの四元の図(しげんのず[単なる四角形 ◇ ])が、それを物語ります。隣り合う元だけを採用しています。対面する元の組み合わせを用いていません。

 

四元の図から出てくるのが、先に述べた4つのエレメントです。