何故、木星は吉星(ベネフィック)なのか
木星は最大のベネフィック(吉星)とされている一方で、土星は最大のマレフィック(凶星)とされています。木星が拡散の惑星なら、土星は凝縮の惑星です。木星が大きなものを示すなら、土星は小さくなったものを示します。木星が高価な物、豪華なものを示すなら、土星はガラクタを示すとされます。木星は宗教性を帯びている反面、土星にはサターンという呼び名があり悪魔と通じています。木星は澄んだ空の色だとされ、土星は暗くて不透明な色を表すとされます。木星は寛大さを示し、土星は狭い了見を示します。このように、様々な場面で両者はまるで対になっているように描かれてきました。
上述した土星と対比した場合の優位性や、他にも木星が吉祥な星だとされる理由は、太陽や月が支配する獅子や蟹のサインから120度の位置に当たる魚のサインや射手のサインを司ること、地球と同じホットでモイストな惑星とされていることなどがあります。この良さを表す事柄として、古代の人達は、木星が公正に裁くことや正直さに関連するとして、公平に物事を観察し、仲たがいをしている人達に合意をもたらしたり、和合を届けたり、常に良いと考えられる事柄を熱望するとしています。
土星は一番目の惑星として、総体として肉体を表します。その肉体を支える役割を持たされたのが二番目の惑星、木星です。このことから、木星は食べ物を表すことになります。更に、食べ物に即座に交換できる所有物、身の回りの品、そして最も簡単に交換できる貨幣となりました。つまり、木星こそが貨幣を表し紙幣を表し、お金、財産を表す惑星なのです。
所有物を木星が表すとする神話があります。メソポタミアのイシュタルの神話です。イシュタルは黄泉の国の旅をしたく父親に願い出ますが、なかなか許してもらえません。何度も頼み込むと父親もやむなく許可を出します。
この神話では、1ハウスを土星が支配し、2ハウスを木星が支配するというカルディアン・オーダーでの配属を前提にしています。3ハウスは火星が、4ハウスは太陽が支配します。5ハウスは金星、6ハウスは水星が、7ハウスが月となります。惑星は7つしかありませんから、8ハウスは土星に戻ります。そして、9ハウスが木星、10ハウス火星、11ハウス太陽、12ハウス金星となります。
イシュタルは黄泉の国の旅に入っていくには死のハウス、土星の8ハウスから入っていきます。すると、持っているものをどんどん置いて行けと神々に言われます。ついには裸で黄泉の国を旅することになります。ここから、8ハウスには損失のハウスという意味が付けられました。6ハウス、5ハウス、4ハウス、3ハウスと進むにつれ、向こう側の世界からこちら側の世界に帰ってくるときには、向こうでの死のハウス、2ハウスから現世に戻ることになります。
裸で旅をしているイシュタルは、ようやく父親が行ってはいけないという意味が理解できてきます。このままでは、裸で現世に帰ることになると恥ずかしい思いを抱きます。それでも旅はどんどん終焉に近づきます。イシュタルが現世に付いたときに、2ハウスの黄泉の世界からの出口には身にまとう衣服がちゃんと置かれていました。首輪や腕飾りも置かれていました。それを身に着けてイシュタルは父親の元へと帰っていきます。この神話によって、2ハウスには身に着ける着物、財産という意味が付きました。
西洋占星術の奥には、必ずと言っていいほど神話が潜んでいます。イシュタルの神話は、ギリシャ・ローマ神話の中のアフロディーテの原型ではないかと言われるものです。だからといって、2ハウスには金星は登場せず、財産の意味を持つ木星だけが2ハウスを構成していることになります。
木星が財産を表すことから、一種の優位性を持つことになります。お金持ちは、物質的には困ることがありません。これは優位性の一つで、人に配れるものです。精神的な豊かさは、優位性には違いありませんが、人に配るのが難しいものです。財産を表すことから、拡張性のあるもの、高価なもの、豪華な物、寛大さなどを支配していくことになります。
木星のもともとの意味である食べ物は、生命活動の栄養分となります。ホットでモイストな肉体を経巡る血液は、栄養分を運ぶ役割を持ち、まさにエレメントから木星で支配されているものです。血液は赤いので、火星だとだけ思い込むと、血液本来の役割をおき忘れてしまいます。滋養分を体の中に行き渡らせている役割から判断すると、血液は木星となります。色からは火星です。また、怪我をしたりして対外に出ていく血液が火星です。
血液によって作られる、様々な体内の液状のものが木星です。涙、鼻汁、唾液、リンパ液、母乳、その他の様々な液状のものが木星となります。肉体の器官では、血液を浄化する機能を持つ肝臓が、木星のものです。血液を作る骨髄、食べ物に関係のある喉から下の消化器官が木星のものです。食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、まで、滋養分を体に取り入れるために機能している器官です。
木星のオーブは、片側9度全体で18度になります。約、12年で全天を一周し、日本や中国では歳星(さいせい)と呼ばれます。アスペクトごとに、オーブを変更する必要性は一切ありません。アスペクトがオーブを持つわけではなく、惑星が持つものだからです。ただしアスペクトは見るという意味があるので、コンジャンクションだけは、惑星同士が15度の間隔を持つものがコンジャンクションです。
ネイタル・リーディングの本 | 推薦図書 『星の階梯シリーズ』